社会学研究会

高流動性社会における就業者の組織への忠誠心と互酬性――米国西海岸シリコンバレーの専門職の転職行動から

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記事タイトル 高流動性社会における就業者の組織への忠誠心と互酬性――米国西海岸シリコンバレーの専門職の転職行動から
著者 藤本昌代
掲載号 60巻1号(183号)(2015-06)
ページ 3〜21
要約 本研究は組織への忠誠心と転職経験の関係を検討するために、高流動性社会の専門職を対象に調査を行ったものである。分析の結果、以下の三つの発見がなされた。(1)社会的属性を問わず、多くの人々が二回以上の転職を経験していた。三年~五年の就業者が多く、転職の際には職業、産業の継続性が重視されていた。また能動的転職だけでなく、解雇・倒産による転職も三分の一程度の人々が経験していた。(2)転職が多い環境下にあっても人々の組織への忠誠心は高かった。したがって、短期的に組織に関わる人々でも忠誠心を抱くことが明らかになった。(3)組織への忠誠心と転職経験の関係は、転職経験が多い者の方が少ない者より高い忠誠心を持っていることが示された。さらに専門職に興味深い仕事が付与されない場合、転職経験と世代で交互作用が見られた。興味深い仕事が付与されない場合、転職経験の多い者の方が少ない者より高い忠誠心をもっており、また、若年層は中高年層より高い忠誠心をもっていた。生き残りが困難な高流動性社会で雇用されるということは、当該社会で必要な人間であると評価された証拠として自尊感情を高める。この高い忠誠心は、組織から選ばれたという社会的承認の付与に対する組織への互酬性による事象と考えられるのである。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.1_3