社会学研究会

移民送出後の農村における社会変容過程――延辺の中国朝鮮族を事例に

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記事タイトル 移民送出後の農村における社会変容過程――延辺の中国朝鮮族を事例に
著者 許燕華
掲載号 60巻1号(183号)(2015-06)
ページ 23〜41
要約 本論は、移民送出後のホームランド研究の一つとして、国境を越えた大量かつ長期的な移動を経験している中国朝鮮族農村社会に注目するものである。 従来のホームランド研究と朝鮮族研究で見逃されてきた、ホームランドである農村社会が維持されているメカニズムを考察する。そのために、三つの問いを立て、独自のデータに基づいて農地・自治組織・個人関係に焦点をあてることで、移民送出後の農村社会の変容をミクロなレベルで実証的に解明する。流出した朝鮮族の農地を他地域から流入した漢族が耕作することになったのは二〇〇〇年以降からであるが、しかしこれは単純な入れ替えではなく、協同秩序を構築することで、村の農地と社会が保持されている。従来の行政組織、社会組織もそれが維持できなくなっている現実を、漢族を取り入れることで再編しようとしている。個人的関係においては、耕作をめぐる交流をきっかけに、互酬性を意識するコミュニケーションが根付きつつあり、交流が頻繁なところでは文化的習慣の融合を通じてライフスタイルまで変化させている。 また、それぞれの村民小組における朝鮮族と漢族間の共同性にはバリエーションがみえており、農村社会の運営と農地の管理などの領域において、それぞれに状況を参照しながら独自の道をつくりだしてきた。 本論は、こうした朝鮮族農村の生き残りを明らかにすることを通して、国境を越えて激しく人が移動するグローバル化社会における生活安定化の方策に関する試みについての議論に寄与することができるだろう。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.1_23