社会学研究会

名前に対する階層判断とソーシャル・テイスト――コンジョイント分析による推計

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記事タイトル 名前に対する階層判断とソーシャル・テイスト――コンジョイント分析による推計
著者 塚常健太
掲載号 60巻1号(183号)(2015-06)
ページ 43〜61
要約 近年、個性的な名前をめぐる論争が生じている。本稿では計量的手法を用いて、論争の背後にある名前のソーシャル・ テイストを明らかにする。S. Liebersonのソーシャル・テイスト概念を理論的枠組みに据えるとともに、方法論としてはJ. K. Skipperの他者による主観的階級判断の研究を発展させ、コンジョイント分析(ランクロジットモデル)を適用する。 まず調査対象者に複数の名前を提示し、その名前の当事者の社会階層を主観的に判断し、順位づけてもらった。この 順位をデータとして分析した結果、名前以外の情報がなくとも他者は階層を判断するというSkipperの知見が支持さ れた。ソーシャル・テイストとして想定した要因、すなわち名前の特徴︵流行時期・難読性・性別推測困難性︶の全てが階層の判断に影響を及ぼしており、特に流行時期が最も大きな影響を持っていた。また、各要因内の水準の影響力を比較すると、既存の命名規範から外れたものより従っているものが高く判断されるが、従っている中では一工夫あるものが最も高く判断されていた。さらにサンプルを分割して分析した結果、調査対象者の社会的属性、文化資本、内面化する共同体規範によっても判断のあり方は異なっていた。 分析結果を踏まえると、ソーシャル・テイストは既存の規範への同化と、文化資本的な差異化という方向性が同時に希求される対象であるといえる。また、名前をめぐる論争は、自身の所属集団のテイストの許容範囲を超えた名前や、異なるテイストを持つ人間と出会った時に生じるものと考えられる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.1_43