社会学研究会

若者層の内向き志向――留学をめぐる「グローバリゼーションの逆説」

記事情報

記事タイトル 若者層の内向き志向――留学をめぐる「グローバリゼーションの逆説」
著者 藤田智博
掲載号 60巻1号(183号)(2015-06)
ページ 63〜79
要約 本稿は、若年層の内向き志向の進行を、グローバリゼーションの逆説という観点から説明する。グローバリゼーションは、国家間の相互依存を増大させることによって、異文化への関心を高めることが予測される。しかし、自国と外国との象徴的な距離を縮減することによって、外国に対する価値を低下させるといった逆説的な作用も考えられる。 先行研究によれば、留学への志向は、性別、出身階層、経済的な地位、社会的ネットワークといった個人の属性や出生環境によって説明されており、グローバリゼーションのような時代の変化にかかわる変数の効果は十分に検証されてこなかった。それゆえ、内向き志向の進行といった変化をうまく記述することができない。また、先行研究では、留学をそれほど真剣に考えていない層との比較もなされてこなかった。本稿では、留学を真剣に考えていない層も含む、複数時点の調査データを用い、時点・時代の効果として、留学への志向に対するグローバリゼーションの影響の検証を試みた。 その結果、先行研究で指摘されていた個人の属性にかかわる要因の影響が統計的に改めて確認されると共に、留学希望に対しては、時点・時代の負の効果が有意であり、グローバリゼーションと関連して、留学希望の低下がもたらされることが明らかになった。グローバリゼーションの進行が若年層を内向きにするというのは、逆説的ではあるが、グローバリゼーションが国内と国外との間にある象徴的な距離を縮減することで、国内と国外の価値に平準化が生じている可能性が示唆された。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.1_63