社会学研究会

家父長制意識と排外的態度――EASS2008を用いた中台日韓の比較社会学

記事情報

記事タイトル 家父長制意識と排外的態度――EASS2008を用いた中台日韓の比較社会学
著者 伊達平和
掲載号 60巻2号(184号)(2015-10)
ページ 75〜93
要約 本論文では、東アジアにおける排外主義運動の高まりを背景として、中国・台湾・日本・韓国の四地域において、家父長制意識と排外的態度の関連について比較分析した。データはEast Asian Social Survey(EASS)2008を用い、 主な独立変数に、家父長制意識の二つの要素である「父権尊重意識」と「性別役割分業意識」を用いた多変量解析を行った。その際、家父長制意識の効果が家父長以外の権威(リーダーの権威・上司の権威)への従属を示す「権威主義的従属」に媒介されるという点についても検討した。主な結果として、①日本と韓国において性別役割分業意識が排外的態度と関連すること、②日本では性別役割分業意識に加えて、父権尊重意識も関連すること、③家父長制の構造的な強さは排外的態度の地域レベルの強さとは関連しないこと、④概して家父長制意識は、「権威主義的従属」変数を媒介せず、独立して排外的態度と関連していることが明らかとなった。以上の結果より、日本と韓国の家父長制の構造が、中国と台湾に比べて強いために、家父長制を基盤とした権威主義的性格が形成されやすいという点を指摘した。また、日本のみ示された父権尊重意識と排外的態度の関連について、日本は父権に対して曖昧な態度を示す人々が多く、父権を選択可能な価値観として捉えているために、排外的態度と関連した可能性があると論じた。最後に中国と台湾では、家父長制意識だけでなく権威主義的従属との関連もみられなかったことから、これまでの権威主義の議論を東アジアの比較研究において単純に適用することの不可能性についても指摘した。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.2_75