社会学研究会

現代中国における都市移住と商業ネットワーク――深圳の潮州系自営業者を事例として

記事情報

記事タイトル 現代中国における都市移住と商業ネットワーク――深圳の潮州系自営業者を事例として
著者 連興檳
掲載号 61巻1号(186号)(2016-06)
ページ 23〜41
要約 本研究は、改革開放後の中国における都市移住現象を対象に、地方文化の観点から、農村・地方出身者の移動のあり方と都市への定住に注目するものである。 一九八〇年代以降に発生した大規模な農村から都市への移動を背景に、中国における人口移動の研究は、都市で働く農民工を中心に行なわれ、その成果も数多くある。しかし、従来の研究は、戸籍制度による影響や農民工のもつ経済状態などに主に注視してきたために、農民工がもつ社会的な側面と結びつけて移動のプロセスや問題点を十分解明することができていない。そこで本稿では、中国東南部にあってユニークな地方文化をもつ潮州地域から深圳に移動した農民工に焦点を当て、彼らの社会・文化的特質を醸成する地方文化に注目し、その都市移住プロセスを解明する。 深圳で実施した聞き取り調査の結果によると、人的資本に乏しい潮州人は、一般的に言われている農民工と同様に、単純労働者として移動するが、親族・同郷者が中心となる商業ネットワークを通じて商売に転向し、定住を果たしている。それは、彼らの商業志向や宗族文化などの社会・文化的特質と密接に関係している。それにより、潮州人は他の農民工とは異なったかたちで都市社会に適応している。 このように、従来の農民工研究では重要視されてこなかった地方文化の側面から、農村出身者の多様な都市移住プロセスがみられる。したがって、経済的要因と地方文化を結び付けて分析することは、中国における人口移動のさらなる実態をうかがう一つの方法だといえる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.61.1_23