社会学研究会

在日朝鮮人の個人主義的な民衆文化運動と共生実践――内発的で普遍主義的な文化の研究

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記事タイトル 在日朝鮮人の個人主義的な民衆文化運動と共生実践――内発的で普遍主義的な文化の研究
著者 山口健一
掲載号 61巻2号(187号)(2016-10)
ページ 21〜39
要約 本稿は、「民族文化牌ハンマダン」の事例に着目し、在日朝鮮人の民衆文化運動の思想と民族まつり実践との継承関係の一形態を考察する。その分析にはA・ストラウスの相互行為論と質的調査法を用いた。 ハンマダンの社会的世界は、韓国籍や朝鮮籍の在日朝鮮人のみならず、日本籍やダブルの在日朝鮮人、労働者階級出身者や被差別部落出身者、琉球民族、障碍者の日本人のメンバーからも構成されていた。それゆえその世界は、民族的な同質性を強調する共同体主義的な在日朝鮮人の民衆文化運動の思想と相反していた。しかし考察の結果、その世界は、在日朝鮮人の民衆文化運動の普遍主義的な観点を継承・展開し、抑圧され差別された個々の民衆の共生を実践する、個人主義的な民衆文化運動であることが明らかになった。 在日朝鮮人の民族まつりの先行研究では、社会的承認を求める共同体主義的な在日朝鮮人の民衆文化運動から多様な人びとの共生への質的な変化が指摘されている。これに対し本稿の知見は、共生と相反すると評されてきた在日朝鮮人の民衆文化運動の新たな展開可能性を拓くものである。加えて本稿は、その事例分析から浮かび上がる、民衆の問題解決行動に着目し、普遍的な価値とローカルな文化実践との接合プロセスを探究する、内発的で普遍主義的な文化の研究の方向性を述べる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.61.2_21