社会学研究会

小泉内閣期における有権者のイデオロギーの規定因

記事情報

記事タイトル 小泉内閣期における有権者のイデオロギーの規定因
著者 白崎護
掲載号 60巻3号(185号)(2016-02)
ページ 97〜115
要約 二〇〇一年から二〇〇五年にわたる小泉内閣期の世論調査パネルデータを用い、有権者の保守・革新の自己イメージ(保革自己イメージ)が政党に対して抱く好感度(感情温度)に与える影響、および保革自己イメージの規定因を検討する。具体的には、自民・民主各党への感情温度に与える保革自己イメージの影響を問うパネル回帰分析、および経済・外交についての五つの争点に対する態度や政治への信頼感などの心理的変数が保革自己イメージに与える影響を問うパネル回帰分析を行う。知見は四点である。第一に、保革各派が各々自民党・民主党への支持を強化する点で、イデオロギーに基づく二大政党制を有権者が認識している事実を確認した。この点では、右派の自民党と左派政党が対峙した五五年体制の有権者意識との類似が見られる。第二に、保革自己イメージに影響する争点が政府による地方補助への賛否をめぐる争点に限られる点で、保革自己イメージに対する争点の規定力の低下を確認した。この点は、イデオロギーに基づく諸政策の対立が見られた五五年体制と異なる。第三に、小さな政府への支持が革新の自己イメージと関連していたが、その一因が自民党政権の大きな政府への志向を認識した有権者による旧来の政治への拒否と思われる点を解明した。第四に、政党・政治家への信頼が保守の自己イメージと自民党への支持を、不信が革新の自己イメージと民主党への支持を促す対照的な傾向を確認した。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.3_97