社会学研究会

日本における〈セックス/ジェンダー区別〉の使用の変遷

記事情報

記事タイトル 日本における〈セックス/ジェンダー区別〉の使用の変遷
著者 須永将史
掲載号 60巻3号(185号)(2016-02)
ページ 117〜132
要約 本論文では、日本におけるgenderの使用の歴史的解明を試みる。日本でgenderが使用されるようになってきた 三十年という期間の間に、どのような使用の変遷を経て、現在の用法へたどり着いたのか、その筋道を明らかにする。 具体的には、上記の二つの特徴、すなわちどのようにセックス/ジェンダーが成立したか、そしてどのように genderは、「ジェンダー」として複数の用法をになわされるようになってきたか、という問いに焦点をしぼって分析を進める。扱う文献の領域はフェミニズム、ジェンダー論にとどまらず、genderが初めて使用された性科学や、genderの普及に貢献した人文社会思想などの領域も含める。 第一節では、一九七〇年代と八〇年代のフェミニズム・女性学におけるgenderの使用を検討する。ここではsexとgenderがどのように翻訳されたのかを問題とする。 第二節では、八〇年代前期のIvan Illichの思想とその流入がもたらしたエコフェミ論争を検討し、それがもたらした片仮名表記の「ジェンダー」の普及を考察する。当時流行したIllichやIllich派と言われる論者たちのgenderを、「社会においてあるべき男女の関係性」と定義していたことを指摘する。 第三節では、八〇年代後期の日本初の性科学の確立を試みた黒柳俊恭のgenderの用法を検討する。同時に、「個人が自分の性別をどう感じるか」という黒柳のgenderの定義が、gender概念の創始者であるJohn MoneyよりもRobert Stollerのそれに近いものであることを指摘する。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.60.3_117