社会学研究会

入職経路の個人内効果――非正規雇用から正規雇用への転職のパネルデータ分析

記事情報

記事タイトル 入職経路の個人内効果――非正規雇用から正規雇用への転職のパネルデータ分析
著者 福井康貴
掲載号 61巻3号(188号)(2017-02)
ページ 23〜39
要約 本稿では、労働政策研究・研修機構が二〇一三年に実施した「職業キャリアと働き方に関するアンケート」の職歴データを用いたパネルデータ分析によって、非正規雇用から正規雇用への転職に対する入職経路の効果を明らかにする。 非正規雇用と正規雇用の間の移動障壁に関して国内外で研究が蓄積されつつあるが、移動を媒介する入職経路に着目した研究はきわめて少ない。転職プロセスという視角を導入することで、外部労働市場を通じた正規雇用化の様態により迫ることができる。そこで正規雇用に転職しやすい入職経路を検討した。また、入職経路と累積的不利の関係を探るため、初職の時点で確定した不利な求職者属性(ジェンダー、学歴、初職非正規)によって、入職経路の効果が左右されるのかを検討した。同類性や求職意欲に起因するバイアスに対処するため、固定効果モデルとハイブリッドモデルを用いて分析した。 分析の結果、直接応募とくらべて、友人・知人とハローワークは、正規雇用への転職に対して正の効果をもつことがわかった。この結果は、日本の労働市場でも社会的ネットワークの地位達成効果が認められる余地があることや、ハローワークが非正規/正規間の移動障壁をのりこえるために機能していることを示唆している。また、求職者属性と入職経路の交互作用を検討した結果、第一に、友人・知人の効果は求職者属性の違いに左右されないことがわかった。第二に、ハローワークは、求職者の学歴の低さに対して脆弱な側面があるものの、初職非正規の正規雇用化に役立っていることが明らかになった。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.61.3_23