社会学研究会

大卒就職機会における学校歴仮説とコミュニケーション能力――インターネット・パネル調査による計量分析の試み

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記事タイトル 大卒就職機会における学校歴仮説とコミュニケーション能力――インターネット・パネル調査による計量分析の試み
著者 吉岡洋介
掲載号 62巻3号(191号)(2018-02)
ページ 3〜20
要約 これまでの学歴社会論では、大学生の就職機会、とくに卒業後に就く職場が大企業や官公庁かどうかを左右する要因として、大学の選抜度が重要であるとする学校歴仮説が支持されてきた。しかし近年では、採用に際し学生のコミュニケーション能力を重視しているという大企業も多い。本稿では、昨今頻繁に取り上げられる一方で大卒就職機会における役割の検証が不十分であった学生のコミュニケーション能力に注目した。 就職前のコミュニケーション能力が就職結果に及ぼす影響を分析するため、できるだけ進路が決まる前に学生の能力を測定し、卒業後に同じ学生の就職先情報を調べるインターネット・パネル調査を実施した。またコミュニケーション能力については、企業がどのような人材を望ましいと考えているかを企業情報誌の言説分析により明らかにした先行研究にもとづき変数を操作化した。 インターネット・パネル調査により在学中のコミュニケーション能力と卒業後の就職先情報が得られた全国一一三大学出身の一五六名を対象とした計量分析から、つぎの二点が明らかになった。(1)企業が求めるようなコミュニケーション能力を統制しても選抜度は就職先の企業規模に影響し、学校歴仮説は頑健といえる。(2)コミュニケーション能力は、選抜度やクラブ活動の熱心度を統制すると企業規模に影響しているとはいえなくなる。(2)の発見は、企業側が学生のコミュニケーション能力を重視しているとしながら、実際は学校歴などの可視的な情報を代理指標(シグナル)に採用を行っていることを示唆する。つまり分析結果は、学校歴仮説におけるシグナリング理論による説明を実証的に支持するものと位置づけられる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.3_3