社会学研究会

保革自己イメージと政府支出への支持――世論研究における分位点回帰の適用

記事情報

記事タイトル 保革自己イメージと政府支出への支持――世論研究における分位点回帰の適用
著者 池田裕
掲載号 62巻3号(191号)(2018-02)
ページ 21〜39
要約 世論研究では、有権者のイデオロギー的立場が政府支出への支持とよく相関すると繰り返し報告されている。具体的には、自身を保守的だと考える人ほど、ほとんどの政策分野における政府支出の増加を支持する傾向が弱い。それに対して、日本では、有権者のイデオロギー的立場が小さな政府への選好とほとんど相関しない。すなわち、いくつかの研究は、日本の保守と革新が政府支出の増加を同じ程度に支持することを示唆している。ほかの国の場合と異なり、有権者のイデオロギー的立場が政府支出への支持とほとんど相関しないなら、それは日本の世論の重要な特徴である。本稿 は、JGSS-2010のデータを用いて、保革自己イメージと政府支出への支持の関係に関する理解を発展させる。とりわけ、 主要な知見は以下のとおりである。第一に、カテゴリカル確証的因子分析によれば、支出項目のあいだの相関は単一因子によって十分に説明される。第二に、線形回帰モデルにおいて、政府支出への支持に対する保守主義の効果は統計的に有意でない。条件付き平均値の観点からは、政府支出に関して、保守と革新のあいだに意見の隔たりがない。第三に、分位点回帰の結果は、保革自己イメージが条件付き分布の中位の分位点を有意に予測することを示している。具体的には、高水準の保守主義は、条件付き分布に左方向の位置変化をもたらす。それゆえに、自身を保守的だと考える人ほど、政府支出の増加を支持する傾向が弱いという仮説は部分的に支持される。本稿の結果は、先行研究が想定したよりも多くの分析者にとって、分位点回帰の適用が有益であることを示唆している。 変数間の関係を十分に表現するために、本稿は分位点回帰を適用する。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.3_21