社会学研究会

トラッキングが高校生の教育期待に及ぼす影響――パネルデータを用いた傾向スコア・マッチングによる検証

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記事タイトル トラッキングが高校生の教育期待に及ぼす影響――パネルデータを用いた傾向スコア・マッチングによる検証
著者 中西啓喜
掲載号 62巻3号(191号)(2018-02)
ページ 41〜59
要約 本稿は、学齢児童生徒を追跡的に調査したパネルデータの分析により、高校生の進路分化におけるトラッキングの因果効果を実証することを目的としている。 トラッキングとは学力や希望進路によって学校ないし学級編成を同質化し、高校生の教育期待を水路づける教育システムと定義される。しかし、日本では高校入学前後の情報を含んだパネルデータがほとんどなかったため、高校生の進路分化が所属トラック内での社会化の結果であるのか、それともトラック参入以前の学力や教育期待をバイパスしているにすぎないのかが不明確であった。 高校三年生を対象に、 関東と東北の二地域において収集された(N=760)。トラッキングの処置効果を明らかにするため、本稿の分析手法は傾向スコア・マッチングを採用した。分析から得られた知見は、(1)出身社会階層の高い生徒ほど中学三年生時点での学校での成績が高く、トラックの配分は、社会階層によって形成された中学三年生までの成績をもとに行われていること、(2)トラッキングの処置効果は、高校三年生の教育期待に対して因果効果が観察されたこと、(3)トラッキングの処置効果は、進学トラックに配分されやすい生徒ほど受けやすいという効果の異質性があること、の三点である。 以上より得られた知見から、日本のトラッキングシステムは、青少年の出身社会階層に起因する教育的な不平等を維持・拡大するディバイスとして機能していることが示唆される。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.3_41