要約 |
現代日本の外国好感度の特徴を社会変動と関連させて解明するために、ギデンズの近代性の理論を踏まえつつ、歴史家・教科書への信頼と社会科学にかかわる専門知識所有に注目して、外国好感度の調査・分析を行った。日本人の外国好感度は、西欧資本主義諸国に対して高く、アジア・アフリカ地域・旧社会主義圏に対して低いことが知られているものの、東西冷戦体制が崩壊して以降、歴史の専門家や歴史教科書への不信感が周辺諸国への敵意として表出する運動も観察されており、改めてその点をより広範なサンプルから検証する必要がある。 一〇ヶ国(アメリカ、ドイツ、スイス、ロシア、オーストラリア、ブラジル、フィリピン、中国、韓国、北朝鮮)への外国好感度に加え、社会科学の専門知識、歴史家や教科書への信頼にかかわる質問を含むインターネット調査を行い、構造方程式モデリングによって変数の影響を推定した。その結果、歴史専門家や教科書への信頼が、社会科学の知識所有との正の交互作用効果を持つこと、また、歴史専門家や教科書への信頼がロシア、中国、韓国に対して正の直接効果を有していることが明らかになった。そして、同一個人が複数の国に対して類似した回答パターンを示していることも明らかになった。それゆえ、専門知識所有に依存しながら、専門家・教科書への信頼は好感度を高めているといえる。 本稿の結果は、現代日本の外国好感度を考察するうえで、知識を得ることと同じように、専門家への信頼が重要な役割を果たすことを示唆しているが、今後は、知識所有と専門家への信頼を測定するより包括的な尺度の作成とクロスセクショナルなデザインの調査データの乗り越えが課題となる。 |