社会学研究会

女性の教育歴とスキル形成――スキル形成レジームに基づく計量社会学的分析

記事情報

記事タイトル 女性の教育歴とスキル形成――スキル形成レジームに基づく計量社会学的分析
著者 佐野和子
掲載号 64巻1号(195号)(2019-06)
ページ 21〜40
要約 本論文は、今世紀初頭より欧米を中心に発展している「資本主義の多様性」論から発展した「スキル形成レジーム」を分析視座として日本の教育システムを捉え直し、教育歴と職業的スキル形成の関連を、女性の資格取得を分析対象として明らかにするものである。 スキル形成レジームの中で日本は「企業特殊的な」スキル形成を特徴とする国、つまり学校よりも企業ベースのスキル形成が優勢であり、企業特殊的技能を保護する制度的枠組みが日本の比較優位性を基礎づけるとされている。しかし、 JGSS-2009ライフコース調査を用いて、スキルのタイプを表す指標である資格に着目して教育歴ごとのスキル形成を 分析した結果、先行研究による日本の位置づけは必ずしも女性には当てはまらない状況が描き出された。その内容は次の三点に集約される。(1)女性は企業特殊的スキルレジームのメリットを享受するよりもむしろ企業のスキル形成への関与を避け、異なる職場に持ち運びできる﹁産業特殊的な﹂スキルを学校ベースで形成する傾向が男性よりも高い。(2)女性の取得上位の資格をみると、男性との競合の少ない対人サービスや事務職に結びつく技能に偏重している。またこれらの技能をキャリア途中で獲得する女性も多い。(3)国際比較研究において日本の教育は一般的技能志向であると位置づけられるが、女性にとっては産業特殊的な技能を獲得する重要な場となっている。いっぽう、資格化された技能は異なる企業に持ち運び可能な性質をもつと定義されるが、実際の活用状況には資格間でばらつきがある。 以上から、学生時のスキル形成に加え、キャリア途中のスキル形成を支える継続的な支援策が求められていると考える。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.1_21