社会学研究会

ウェーバーにおけるルサンチマン論への対応――一元論批判および〈抑圧〉概念批判をめぐって

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記事タイトル ウェーバーにおけるルサンチマン論への対応――一元論批判および〈抑圧〉概念批判をめぐって
著者 中澤平
掲載号 64巻1号(195号)(2019-06)
ページ 41〜59
要約 本稿は、F・ニーチェへの言及を手がかりにM・ウェーバー社会学の特質を明らかにするために、ウェーバーのルサンチマン論への言及に着目し、彼のルサンチマン論への対応が一元論批判と抑圧概念批判という方法論的視点によって貫かれていることを明らかにする。 ウェーバーは〈救済欲求〉や〈精神の形而上学的要求〉などをルサンチマンから明確に区別した上で、それぞれを宗教分析において重要な要素として位置づけている。このウェーバーの議論の背景には、多元論的観点からニーチェのルサンチマン論を一元論として批判する一貫した姿勢が存在している。 ウェーバーは、ニーチェのルサンチマン論が精神分析学的な抑圧概念を含むものとして正確に理解し、特に苦難の神義論における価値逆転と関わらせて理解している。その上で彼は、ニーチェのルサンチマン論における抑圧概念の適用を批判している。ウェーバーは自身の経験的分析に際しても抑圧概念の適用を自覚的に回避しているが、その理由は、彼がフロイトの抑圧概念を未確証と捉えた点、および無意識ではなく意識的な意味の理解による説明を自己の理解社会学に固有の課題とした点にある。彼は意味連関を理解するにあたっても、これを特定の要因に還元せずに様々な要因から捉えている。この多元論的方法論はウェーバー社会学の特質である。 ウェーバーは宗教倫理の分析に際して、ルサンチマンだけでなく様々な要因を視野に入れた上で各要因の意義を慎重に見極め位置づけている。特に彼は〈自尊感情〉の意義を重視しているが、第二イザヤの苦難の神義論に関するウェーバーの分析はその一例とみることができる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.1_41