社会学研究会

私は部外者それとも「準家族」?――ケア労働者が担うイタリアでの在宅看取り

記事情報

記事タイトル 私は部外者それとも「準家族」?――ケア労働者が担うイタリアでの在宅看取り
著者 福島智子
掲載号 64巻1号(195号)(2019-06)
ページ 61〜80
要約 病院死の割合が高い日本では、医療資源の不足を背景として、在宅死を含めた病院以外の場所での看取りが推進されている。本稿では、欧州の中でも在宅死率が約五割と高いイタリアを取り上げ、在宅死の詳細――だれがいかに看取るのか――を明らかにする。「死にゆく過程」を対象とした従来の研究においては周縁的であった高齢者の死に焦点を当て、ケア労働者二三名を対象としたインタビュー調査を実施した。 本調査の対象者の多くは移民女性である。超高齢社会であるイタリアの高齢者の多くは、人生の最期を自宅で過ごす。 死にゆく過程に寄り添うのは、部外者で、ときに家族の一員とみなされるケア労働者である。介護している高齢者の死は突然であることが多く、その場合、死期が近いという自覚を前提とした準備をすることは難しい。被介護者の突然の死に寄り添うことは、ケア労働者に大きな精神的負担を強いるものとなっていた。 ケア労働のグローバル化に伴い、介護の先にある看取りという行為までも移民女性が担う現状が明らかとなった。本調査の対象者の多くは、臨終に寄り添い支援することを不当な――契約上の仕事以外の様々な仕事をさせられる―― job creepとは捉えていない。むしろそれを仕事の一部ではなく、 「家族の一員として」あるいは「人として」の義務であると感じている。 このようなケア労働者による看取りは、イタリア社会において理想とされる「愛する家族に寄り添われる死」を、本来の家族に代わって実現する面をもち、家族主義的価値観を補強する逆説的役割を果たしている。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.1_61