社会学研究会

親密性と社会統合――東アジアにおける紹介型国際結婚の夫婦関係に影響する要因

記事情報

記事タイトル 親密性と社会統合――東アジアにおける紹介型国際結婚の夫婦関係に影響する要因
著者 郝洪芳
掲載号 64巻1号(195号)(2019-06)
ページ 99〜116
要約 本稿は、東アジア社会における紹介型国際結婚に注目し、主に女性側の視点からそれが円滑に持続するための要因を明らかにするものである。 紹介型国際結婚とは、親戚や友達、仲介業者等の紹介を通じた国際結婚のことであり、近年、女性移民研究の領域では、「国際移動の女性化」という観点からグローバルな社会問題として注目されている。本稿は、こうした紹介型国際 結婚の持続要因を分析する際に、「マルチサイテッド・エスノグラフィー」(multi-sited ethnography)の手法を用 いることで、日本、台湾、中国で生じた三つの事例を比較した。具体的には、夫婦関係を取りまく社会制度(在留資格、労働慣行)や地域社会における諸関係(地縁・血縁・親族関係)を詳細に把握するとともに、調査対象者である女性の主観的な意味づけをそうした諸関係の文脈の中で多角的に捉えるべく追跡調査を行った。 分析の結果、東アジアにおける紹介型国際結婚の夫婦関係に影響する要因は、夫婦間の親密性に加えて、移住女性の受け入れ社会への統合の度合いであることが明らかになった。以上の知見は、紹介型国際結婚を行う女性を「従属する犠牲者」か「抵抗する主体」かという二項対立的に捉えることで見落とされてきた先行研究の課題を乗り越えて、国際結婚移住者の社会統合問題という新たな研究領域を開拓するための出発点になりうると考えられる。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.1_99