社会学研究会

P・L・バーガーの資本主義擁護論――M・ノヴァクとの対比から

記事情報

記事タイトル P・L・バーガーの資本主義擁護論――M・ノヴァクとの対比から
著者 池田直樹
掲載号 64巻3号(197号)(2020-02)
ページ 21〜38
要約 本稿の目的は一九八〇年代のP・L・バーガーの思想、特にその資本主義擁護論を新保守主義との関係において解釈することである。一般にバーガーと新保守主義の関係は、一九七〇年代から八〇年代にかけての接近、九〇年代の決裂という流れで理解されていると言えよう。だが両者の関係の破綻に至る伏線は、八〇年代にすでに胚胎されていたと考えられる。これを論証するために本稿は、この時期のバーガーの中心的主題であった資本主義擁護論を同時期の彼の対話相手の一人であったM・ノヴァクの同種の議論と対比する。 バーガーの八〇年代の資本主義論は七〇年代における第三世界への関心に端を発していた。彼はこの主題に取り組む中で、自らの社会観と資本主義との適合性を徐々に自覚していく。 ノヴァクは八〇年代に、資本主義やアメリカ社会への批判が激化する中で、資本主義の宗教的な正当化を求めた。その際彼に大きな示唆を与えたのがM・ウェーバーである。そうしてノヴァクは、資本主義における営利活動がユダヤ―キリスト教の精神に満ちていることを強調し、また、資本主義は民主主義と必然的に結びつくこと、その内部に多元主義を生み出す点においてユダヤ―キリスト教の精神に共鳴することを説いた。 バーガーの議論はノヴァクの議論と多くの主張を共有していたが、そこには確かな相違も存在した。両者の相違は以下の四点にわたる。すなわち資本主義と民主主義の相関性の度合い、資本主義の宗教的正当化の可能性、ウェーバー受容、アメリカ社会観である。総じて言えば、バーガーは資本主義を擁護するものの、ノヴァクの極めて宗教的な議論には距離をとっていた。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.3_21