社会学研究会

児童養護施設で暮らす小学生男子たちにとっての〈友人〉――子ども同士の関係の質的な違いに着目して

記事情報

記事タイトル 児童養護施設で暮らす小学生男子たちにとっての〈友人〉――子ども同士の関係の質的な違いに着目して
著者 三品拓人
掲載号 64巻3号(197号)(2020-02)
ページ 77〜94
要約 本稿では「児童養護施設で暮らす小学生男子が形成する子ども同士の関係にはどのような特徴があるのか」という問いを立て、施設生活の参与観察データを基に友情の社会学の理論――とりわけ、仲間/友人関係の違い――を援用しながら子ども同士の関係を検討した。 その結果、以下の三点が明らかになった。一点目に、児童養護施設の子どもは実に多様な原理で結びつく子ども関係の中で生きていることが分かった。それゆえに、施設にいる間は、子どもは孤立しにくく、共に過ごしている時間や相互行為の内容を考えた際には、学校で形成される関係以上の密接さを有していた。二点目に、友情に関する理論と照らし合わせると、自発性や文脈によらない関係という観点から、施設内での子ども同士の関係は〈仲間〉関係に近く、学校の知り合いが〈友人〉関係に近いと判断できた。同じような子ども同士の関係に見えても、〈仲間〉/〈友人〉関係では結びつく原理やその特徴が質的に異なっている。三点目に、施設で生活する子どもにとって学校での〈友人〉関係を積極的に形成し難い事例が見られた。具体的には、施設内の他者の介入があること、施設内のルール及び職員の配慮との抵触すること、子どもが施設周辺地域の地理を知らないこと、という構造的な問題が発見された。 以上から「児童養護施設で暮らす小学生男子が形成する子ども同士の関係にはどのような特徴があるのか」という問いに対して、「施設内での多様な〈仲間〉関係が形成される一方で、学校における〈友人〉形成が制限されるような特徴がある」と結論付けた。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.3_77