社会学研究会

現代社会における排除、序列、自己愛、あるいはマウンティングについて――本質主義をめぐる観点からのアイデンティティ論再考

記事情報

記事タイトル 現代社会における排除、序列、自己愛、あるいはマウンティングについて――本質主義をめぐる観点からのアイデンティティ論再考
著者 寺崎正啓
掲載号 64巻3号(197号)(2020-02)
ページ 95〜112
要約 本稿は本質主義というキーワードを軸に現代社会の精神状況を抽出し、記述したものである。ニート・ひきこもり、スクールカースト、マウンティング、ネット炎上等の現象を本質主義というキーワードのもと読み直すことで、今日的な排除、序列のあり方やそこでの問題点を明らかにすることを目的とする。 主として00 年代以降インターネットの普及を通じて、よりミクロな領域における排除や序列化の過程が加速度的に可視化した。そこで我々は、規模の大小を問わず展開される排除や優劣を示すレトリックを頻繁に目にすることになる。 本稿は、そこで見られる排除性や序列意識を悪魔的で例外的なものとするのではなく、我々の一部として、自明のうちに、あるいは潜在的にどのように人間の内に落とし込まれてきたのかについて考察する。 議論は、アイデンティティ論が抱えていた「働くこと」というテーマをめぐる本質主義的、排除的な側面に焦点を当てるところからスタートする。 次に、消費社会で形成されるアイデンティティ、及びそれに伴う序列意識について論じる。 第三に、アイデンティティ形成の過程において異なる準拠枠を持つ者同士が、他者をことさらに劣った者として位置づける悪魔化のプロセスに着目する。自己愛の最大化をめぐり、社会的文脈や道徳的文脈を利用する今日に特徴的な戦略を記述する。 最後に、本質化や悪魔化の帰結としてマウンティングと呼ばれる攻撃性やナチュラルな上から目線が生じていることを指摘し、議論を結ぶ。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.3_95