社会学研究会

親は子どもの県外移住にどのように関与したのか――島根県若年層人口流出と家族実践についての一考察

記事情報

記事タイトル 親は子どもの県外移住にどのように関与したのか――島根県若年層人口流出と家族実践についての一考察
著者 片岡佳美
掲載号 64巻3号(197号)(2020-02)
ページ 113〜129
要約 地方では、主に進学が原因と見られる若年層の人口減少が著しい。かれらの県外移動に対し、家族、とりわけ親がどのように関与してきたか。島根県で、子ども(高校生)を県外の大学に進学させることを考えている親、あるいは実際に進学させた親を対象にインタビュー調査を行ない、地域人口をつくり出す主体としての家族の働きを議論するための仮説の提示を試みた。 分析では、「家族実践」の視点を取り入れた。それは、個々の成員が、家族であるがゆえに、そして家族になるために日常的に行なっていることに注目する視点である。親たちは、親であろうとするために、かれらが親として当然と考える「子どもに広い世界を学ばせる」という家族実践に熱心だった。幼い頃から習い事や異文化交流など、さまざまな「広い世界」を子どもに体験させ、そして最終的に子どもが県外の大学進学を選ぶように仕向けていた。そこには「こんな狭いイナカしか知らないのでは生き残れない」という競争社会的価値に加え、「親はわが子のために尽くす」「親がやらなければだれがやる」といった近代家族的な規範が見られた。一方で、子どもが県外に出た後の親たちの家族実践は、どこに向かって進むべきか目標が定まっておらず活発でない。それほどまでに、「広い世界を学ばせる」ことが、かれらにとって親としての最大の家族実践だったことが窺える。かれらが集中して熱心に取り組む家族実践で子どもの県外流出が進むこと、そしてそうやって近代家族や競争社会の規範や文化もが子どもに伝えられていくことを示唆した。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.64.3_113