社会学研究会

ボランティア参加の階層的基盤――文化的豊かさに注目して

記事情報

記事タイトル ボランティア参加の階層的基盤――文化的豊かさに注目して
著者 猿渡壮
掲載号 62巻1号(189号)(2017-06)
ページ 41〜59
要約 これまで、ボランティア参加と社会階層の関係に関してなされた多くの研究において、高階層の人ほどボランティア活動への参加に積極的であることが明らかにされてきた。そこでは、収入や財産が多いこと、学歴が高いこと、専門職や管理職に就いていること、自分を上層だと認識していることなど、階層の高さに関わる種々の要因がボランティア参加と関連することが示されてきた。しかし、階層に関わるどの要因が強く参加に影響しているのかという点について、日本の諸研究の見解は必ずしも一致しているわけではない。そのこともあり、既存の諸研究は参加の背後に何らかの“豊かさ”が存在することを示しつつも、どのような豊かさの違いが参加に影響しているのかという点について、あまり明確な回答を提示していない。 そこで本研究では、「ボランティア参加には階層差があるのか」という従来検討されてきた問題に加えて、「どのような豊かさの違いが参加に影響しているのか」という問題について検討を行う。分析に用いるのは「二〇〇五年SSM日本調査」から得られたデータである。このデータをもとに、現在および出身家庭の経済的豊かさや文化的豊かさに関する指標が作成され、それらの変数がボランティア参加に与える影響について検討がなされる。 分析から示されたのは、(一)経済的な意味での豊かさよりも文化的な豊かさが参加に強く影響していること、(二)出身家庭の文化的豊かさや現在の経済的豊かさが、現在の文化的豊かさを介して参加に影響していることである。以上の分析結果を踏まえ、幅広い層からの参加によって成りたつ市民社会にとって、文化的再分配を目指す施策が重要な意味をもつことが議論される。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.1_41