社会学研究会

食の調達実践にみる在日ベトナム人の社会関係利用――一世世代に着目して

記事情報

記事タイトル 食の調達実践にみる在日ベトナム人の社会関係利用――一世世代に着目して
著者 瀬戸徐映里奈
掲載号 62巻1号(189号)(2017-06)
ページ 61〜78
要約 本稿の目的は、異文化社会で新たな生活基盤を築くことになった在日ベトナム人が、故郷の「食」を再現する際にどのような社会関係を利用するのかを明らかにすることである。そのために、食べ慣れた故郷の料理に必要な食材を調達する行為を食の調達実践とよび、貨幣を用いる市場交換・採集や栽培などの自給・人間関係を介する互酬という三つの実践に区分した。 エスニック・ビジネスが発達していない一九八〇年代の日本の地方都市に暮らす在日ベトナム人の生活状況は、日本の市場状況の変化、ベトナム本国の政策転換、日本で新たに繫がったエスニック・ネットワークの発達状況および地域社会との繫がりに基づくと、①一九七〇年代末―八〇年代、②九〇年代―二〇〇〇年代前半、③二〇〇〇年代後半―二〇一〇年代半ばという三つの時期区分に大きく分けられる。この時期ごとに、先述した三つの実践がどのように編み出され、変容したのかを分析することで、食の調達実践を介して浮かび上がる社会関係を明らかにした。 その結果、類似した食文化をもつ他のエスニック・ビジネスの利用や、地域独自の小さな市場へのアクセスなどの市場交換に加え、自然環境を活かした採集や栽培による自給、また国内外のエスニック・ネットワークや就労現場などで出会った人びとの間で互酬が実施されていることがわかった。エスニック・ビジネスに現れるような「食」の提供者、または消費者という関係性に留まらない在日ベトナム人の生活者としての姿を描くことができ、自文化を維持する私的な生活領域から、在日ベトナム人が形成してきた社会関係の様相を捉えることができた。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.1_61