社会学研究会

現在志向が若年層のおとなしさに与える影響――政治委任意識と格差肯定意識に注目して

記事情報

記事タイトル 現在志向が若年層のおとなしさに与える影響――政治委任意識と格差肯定意識に注目して
著者 狭間諒多朗
掲載号 62巻1号(189号)(2017-06)
ページ 79〜96
要約 今の若年層は将来に希望が持てず、それゆえに現在志向が強いのではないかという議論がある。ところが一方で、将来が見えづらいからこそ今の楽しみよりも将来のための努力を優先している若年層を想定することもできる。先行研究では、若年層において学歴が低いほど現在志向が強く、反対に学歴が高いほど現在志向が弱いという学歴差がこの二〇年の間に発生したことが明らかにされている。そこで、本稿では若年層における現在志向の学歴差がどのような問題を引き起こすのかを明らかにする。 本稿で着目するのは「おとなしい若年層」という問題である。社会構造的な問題によって若年層が社会的弱者に転落したにもかかわらず、社会に対して異議申し立てを行う若年層は少ない。その理由として現在志向が政治や格差といった大きな問題に対して受け身にさせているということが指摘されている。 本稿では、政治委任意識と格差肯定意識に注目し、現在志向、およびその学歴差との関連を分析する。 分析の結果、若年層において、現在志向が強いほど政治委任意識、格差肯定意識が強いこと、低学歴の若年層が現在志向を通して政治委任意識、格差肯定意識を強めていることが分かった。 低学歴の若年層ほど困難な状況に置かれている。本来なら政治に訴えかけ、格差縮小を求めるべきかれらの意識を現在志向が屈折させ、自らの利益と相反する方向へ導いてしまっていることがわかった。また、この関連は現在の若年層における学歴と現在志向の結びつきの強さに起因している。現在志向を弱めるために、低学歴の若年層が、今努力すればよりよい将来が得られるという見通しを持てる社会を作ることが重要である。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.1_79