社会学研究会

更生保護施設在所者の「更生」――「更生」における自己責任の内面化

記事情報

記事タイトル 更生保護施設在所者の「更生」――「更生」における自己責任の内面化
著者 相良翔
掲載号 62巻1号(189号)(2017-06)
ページ 115〜131
要約 本稿の目的は、更生保護施設在所者の「更生」について、就労を焦点にして考察することにある。本稿での「更生」とは犯罪を起こした後に犯罪をすることなく生活を続けていくプロセスを意味する。 近年、我が国において元犯罪者の「更生」が専門家によってテーマ化され議論されるようになってきた。そのような状況下において社会内処遇の専門施設である更生保護施設への着目も高まっている。更生保護施設における処遇の中心は就労支援に置かれている。また様々な先行研究においても就労が元犯罪者の「更生」において重要な要因となっていることを指摘している。 そのような前提を置き、更生保護施設Xでのフィールドワークを通じて得られたデータに基づいてX在所者の「更生」について浮き彫りにした。その結果、①X在所者が不安定就労ではあるが速やかに就労する仕組みがあったこと、②X在所者は他者から承認を得るための「就労規範」と他者から距離を置くための「就労規範」の遵守をもって、不安定就労を維持していたこと、③ある元X在所者が退所後において病気からの回復・今後の生活設計・再犯に対する不安を伴いながら、自身の「更生」について語ったことの三点を描き出した。 記述の結果から、X在所者の「更生」は「自立」と同一視されていることがうかがえた。本稿における事例では、自らの貧困状態を犯罪歴と共に「犯罪」に含めて語っていた点が特徴的である。それは「更生」に対する自己責任の内面化を強めていく可能性がある。それにより元犯罪者の「更生」という文脈において、貧困を初めとした諸問題における社会の責任が後景化する可能性を持つことを指摘した。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.62.1_115