要約 |
本稿の目的は、どのような地域特性が個人の市民参加を活発化させるのかを明らかにすることである。とくに欧米の先行研究では、地域の同質性、居住の安定性、都市度が市民参加に影響を及ぼすことが明らかにされてきた。しかし、近年の日本の研究では、都市度以外の地域特性が市民参加に与える影響については十分に明らかにされてこなかった。 そこで本稿では、全国調査データを用いたマルチレベル分析によって、地域特性が市民参加に与える影響を詳細に検討した。具体的には、以下のアプローチを試みた。第一に、地域の同質性と居住の安定性の効果に注目した。第二に、都市度の効果に加えて、日本の地域社会を代表する指標である高齢化率や産業構造等の効果に着目した。 分析の結果、(1)都市度の低い地域では、議員とのつきあい、市民運動、ボランティア活動が活発化しやすいこと、(2)第一次産業に従事する人の割合が高い地域では、議員とのつきあいと市民運動が活発化しやすいこと、(3)人口に占める高齢者の割合が高い地域では、市民運動とボランティア活動が活発化しやすいこと、(4)人口に占める高齢者の割合が高い地域では、高学歴の人ほど市民運動に参加しやすいことが明らかになった。本稿より、都市度だけではなく、高齢化率と第一次産業比率が、その地域に居住する人の市民参加を規定していることが示された。高齢化が進んだ地域や農林水産業が盛んな地域では、地域に共通する課題やニーズがあるために、人びとがそれらに対応する形で市民参加に積極的になる可能性が示唆された。 |