社会学研究会

インターネット利用は人びとの排外意識を高めるか――操作変数法を用いた因果効果の推定

記事情報

記事タイトル インターネット利用は人びとの排外意識を高めるか――操作変数法を用いた因果効果の推定
著者 辻大介
掲載号 63巻1号(192号)(2018-06)
ページ 3〜20
要約 日本では、二〇〇〇年代に入ってインターネット上で排外主義的な言説が急速な広がりをみせ、ネット右翼を母体とする「在特会」のようなヘイト団体の活動が深刻な社会問題となるに至った。インターネットが排外主義者を結びつけ、活動を促進させる触媒の役割をはたすことは、先行研究でも確認されている。しかしながら、そうした一部の活動家集団だけでなく、一般層に対しても、ネット利用は排外意識を高めるような因果的作用をおよぼすのだろうか。このことを計量的な社会調査データをもとに分析した検証例はきわめて少ないうえに、それらもネット利用と排外意識が正の相関をもつことを見いだしたにとどまり、因果の向きは明らかでない。 そこで本稿では、二〇一七年一一月に実施したウェブ調査データをもとに、操作変数法を用いた双方向因果モデルに よって、[i]ネット利用が排外意識を強めるのか、それとも、[ii] 排外意識の強い者ほどネットをよく利用するのか、因果の向きを分析した。その結果、[i]の向きのパスは有意な係数値を示し、正の因果効果が認められたが、[ii] の向きのパスは有意でなく、因果効果は支持されなかった。また興味深いことに、ネット利用は反排外的な意識を高める因果効果も同時に有していることが確認された。追加分析の結果から、この相反的な二方向への同時効果は、情報や他者への選択的接触によって生じている可能性――すなわち、排外意識を先有傾向としてもつ者は、ネット上で排外主義的な情報や他者により多く接触することによって、その影響をより強く受け、反排外意識をもつ者はその逆であること――が示唆された。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.63.1_3