社会学研究会

暴力の上演――一九六〇年代初頭のモデルガンブーム

記事情報

記事タイトル 暴力の上演――一九六〇年代初頭のモデルガンブーム
著者 高橋由典
掲載号 63巻3号(194号)(2019-02)
ページ 3〜21
要約 本稿は一九六〇年代初頭に少年たちを主たる担い手として生じたモデルガンブームを取り上げ、それを正確に記述することを通して、このブームの社会学的な含意を明らかにすることをめざす。 一九六〇年代初頭、少年週刊誌を主たる舞台として、戦争ブームが起こった。戦後十数年を経て突如生じたこの戦争への熱狂は、戦後史の観点からも社会学の観点からも興味深いものであり、研究者の関心を引いてきた。モデルガンブームはこの戦争ブームとほぼ同時期に生じたものであり、両者を合わせて考えると、この時期に、人間を殺傷する暴力への関心が少年たちの間で異様に高まったようにみえる。この文脈でモデルガンブームを考えることが、本稿の課題である。 モデルガンは収集を目的としてあるいは審美的理由で欲望されたのではなく、それを使って遊ぶために欲望された。 モデルガンブームの中心には、モデルガン遊びがある。モデルガンへのそのような一時的かつ集合的な熱狂は、当時国民的人気を博していたテレビ西部劇をきっかけとして生じた。モデルガン遊びとは、テレビ西部劇を再現する遊びにほかならない。その際の焦点は暴力なので、それは暴力の上演とよびうる。むろん暴力の上演には多様なものがある。モデルガン遊びという暴力の上演に固有の特徴は何か。この問いに対し、本稿は、作田啓一の虚構の重層化に関する議論、あるいは見立て忘却、体験選択といった筆者独自の概念に依拠しつつ、また上述の戦争ブームについての分析を深化させることを通して、鍵となるのは「アメリカ」ではないかという仮説を提示している。
要約(英文)
外部URL https://doi.org/10.14959/soshioroji.63.3_3